武器としての決断思考 瀧本哲史

  1. 本書は著者が2011年当時京都大学で二十歳前後の学生に教えていた「意志決定の方法」を一冊に凝縮したものである。
  2. (背景)変化が激しい現代社会においてはこれまでの価値観や方法は意味をなさなくなってきており、旧来から敷かれていた人生のレールは無くなっている。これからの日本社会はもっともっと厳しい状態になると想像され、このまま従来の価値観や方法を踏襲して前にすすめば、むしろ奴隷として、上の世代が作ったシステムに絡め取られる可能性が高く、会社の業績次第では首を切られる。
  3. (目的)これからの若者が一生懸命やるべきは、普通の生活に役立つ実学であり、最も優先的に見につけるべきは「意志決定の方法」である。というのも、今後ありとあらゆるジャンルで、自分で考え、自分で決めて、いかなければならない場面が増えてゆき、自分の人生や家族の将来を見据えながら、ひとつひとつ現時点で最善と思える「意志決定」を行ってゆかなければならない。
  4. ところで、普通、「意志決定」はどのように行われているだろうか?ネット情報、マスコミ情報?みんな(大多数)が言ってるからその判断は正しいと思ってる?自分が正しいと判断したから?ここでは最善と思える意志決定を開陳する。
  5. ネットは玉石混淆、マスコミは偏向、大多数は往々にして間違い、自分の判断だから正しいと思っても、実は間違っている。なぜなら、人の認識や意志決定は歪みやすい(現状維持バイアス・フレーミング・アンカリング・サンクコスト)。
  6. そこで「ディベート思考」が提示される。これは議論を行って物事を決めてゆく方法で、目的地は「正解」ではなく「最善解」となる。
  7. 具体的には、①論題を「具体的な行動を取るべきか否か」二者択一にする。②①に関するある行動を取った時に生じるメリットとデメリットを比較する。③②で取り上げたメリットデメリットを反論にさらし本当に正しいかどうか検証する。④最後に生き残ったメリットとデメリットを比較する⑤判定は「質×量×確率」で考える。
  8. 以上のように纏められる。本書は実学の書であるため、重要な点は詳細に渡り、要約をここで展開してもあまり意味がない。
  9. 世の中の「正解」なんて幻想を捨て、ただひたすらに現時点の「最善解」を「ディベート思考」により導きだし、「自分の人生は、自分で考え、自分で決めてゆき、未来を作ってゆく。この考えに少しでも感じるところがあれば、この書はおすすめである。