
株式会社植松電機の植松努さんのHope invitesというyoutubeの動画は、5年以上前にアップされ400万超再生を得てバズっている。私自身この数年間に3回は視聴した。その内一回は中1になる娘と見ている。娘もお気に入りである。植松努さんはそこでこれまでの歩み、現在の事業等を公衆の面前でスピーチして、ロケットを飛ばす同志を募っていた。その場がTEDxであった。多少なりともの興味を持ったTEDがいかなるものかを知る為に今回はこの本を手に取ったというわけだが、本の内容は自分が抱いた先入観(TED解説本)とは異なり、副題の通り、「スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド」であった。あまり見ずに買った自分の落ち度ではあったが、(スーパープレゼンを自らしたいかの是非はともかく、)当初の目的は達成出来たのでその内容の忘備録とする。
TEDの形式は、いにしえの伝承がメンターから語られる如く、力のあるアイデアを広め育むことをミッションにしている。ここでいうアイデアは技術的なブレイクスルー、単純なハウツーでも、複雑は法律理論でも何でも、「世界の見方を変えてくれるもの」。全てである。TEDのカンファレンスでは数日間に渡り登壇者が18分の持ち時間で自らのアイデアを開陳する。そこでは、数々の登壇者から発せられる言葉と言葉が何処かで重なっていることを発見し、こことあそこが繋がってゾクゾクする体験があるという。つまりTED上では、全ての知識が巨大な蜘蛛の巣のように繋がっている様が現実的に広がり、これからの知のあり方を体現している。有意義な知識を狭い専門性から解放して民主化せよ。とも聞こえてくる。
著者クリスアンダーソンはこれからの知として、・背景知識 ・クリエイティブ知識 ・人間性に対する深い理解 が必要と主張する。これからの知については多くの著作物で触れる機会の多い分野であるが、多くの人が見ている未来はそう違わないものと思える。また別の機会で触れてみたい。
なお、最後にプレゼンの極意であるが、ホント簡単にかいつまんで言えば、著者クリスアンダーソン曰く、
1.イントロ 2.背景 3.コアコンセプト 4.インフルエンス 5.エンド というストリーに纏められ、著者自身のTEDへの参入意思表示のプレゼンから具体的に引用するとこうなる。
「僕は心の底から、できるだけ率直に、信念を掻き集めて話した。事業に失敗したばかりだということ。自分を完璧な負け犬だと思っていること。そんな自分にとって、アイデアの世界に没頭することが、ただひとつの生き残りの手段だったこと。そしてTEDが僕にとって世界の全てになったこと。ありとあらゆる分野のアイデアを共有できる場は、ここにしかないこと。TEDの一番いいところを残してゆく為に全身全霊をかけて力をつくすこと。それにこれまでにものすごい感動と学びをもたらしてくれたTEDを、死なせるわけにいかないこと」
ここまでロジックとか言ってたけど、ね、熱意のほうが、すさまじいね。
2016年7月19日第一版第一刷発行