ヤンキーの虎

藤野英人著「ヤンキーの虎ー新・ジモト経済の支配者たち」。帯には「地方経済の主役交代 いま地方経済を支える新・起業家たちの実態、ビジネス手法」とある。著者はファンドマネージャーで国内各地方を巡り多くの経営者と名刺交換を重ねるうちに〇〇ホールディングスといった一見してどういう経営かわからない会社と数多く出会ううちに本書の視点を得たという。個人的には題名と副題と帯に異様な親近感を覚え、ジャケ買いした。

 本書の趣旨はシンプルだ。一つ一つは魅力的ではなく、平凡なビジネスを、ただ儲かるという視点で地縁血縁のネットワーク上で情報収集作業を駆使し、地方豪族のように、ミニコングロマリットとして地方経済を支配しているヤンキーの虎。その典型的な業態は介護事業、保険業等、あるいは、携帯の普及とともにその販売ショップのフランチャイジーとして巨額な利益を手にしたという。地方の金融機関が資金面を支え、在京のコンサルが経営(高度ではない)をバックアップしている。著者曰く2020年まではこれら経営者は生き延びる。しかしその先は・・・

 マイルドヤンキー視点に影響を受けていることは著作内でも触れられていており、取り立てて新しい点は少ないかも。また、内容は、「題名と副題と帯ですべて語られている」。読み通してもそれ以上の発見には至らなかった。といっても過言でなく、出オチの著作ともいえる。もうちょっとその生態を深く探ってみたらより面白かったのに残念である。分量も少なく二時間ほどで読み終わり、これくらいのページ数なら著作には一か月もかからないのではないだろうか。

2016年4月28日第一刷発行 東洋経済新聞社