君に友達はいらない

三船敏郎が表紙に陣取りして、七人の侍の解説本か、黒澤明のストーリーかと思われるが、それらは本書の内容一部の例示であって、本旨ではない。もちろん著者に、当該ストーリーに多少の思い入れがあろうことはうかがえる。本書はチームアプローチについて書かれたテキスト本であり、読者(特に若者)へのエール本である。七人の侍の脚本作成時のチームが少数精鋭で、圧倒的完成度を誇り、世界を驚倒させたプロダクトをいかに提示したかを述べていている。文中を貫いているのは、論理と背景と手法である。著者が一つの論理をしゃべるとき、明示はされていないものの、うかがい知れないほどの知識総量が重みとして存している。それは具体例の広範囲さから察せられる。がしかし、驚愕すべきは総量としての知識量ではなく、文中からあふれ出てくる読者への熱い期待である。想定される読者層は20代30代の若者。文章は読みやすく、伝わることに十分配慮がなされている。20年前にであっていればと思わせてくれる良書。

2013年11月15日第1刷発行 講談社