羽化

モンシロチョウが漸く羽化した。これで飼っていた二匹の青虫はいずれも成虫となり自然へと帰っていったことになる。あおむしの頃はとにかく食べて食べて食べていたのだが、五日もしない内に、口から糸を吐き出し自らの体にまとわりつけ、さなぎへと姿を変えた。ただ、それからが長かった。不動で無音の時間が続いた。何もなければ時間はゆっくり進む。頭のどこかでまだかまだかと心待ちにした時間よりも、ついにはこれ死んだのではないかと我慢できずに不信感から訝る時間の方が長かったように思える。永遠かと思えるほど。それでも外見上は変化無しだが、内部では生命を賭けた変態が着々と進んでいたことになる。僅か1cmほどのさなぎのなかで。革命的な身体の変化が。的というか革命に違いない。改めて数センチメートルの昆虫に生命の力を見せつけられたてやや呆けてしまっている。