sayonara

旅立っていった。昨日の20時頃だという。大方、それは免れないことだけど、自分の意思で多少の時間の猶予はあるのだろう。私は打ち合わせで外出をしていたのでその時には居合わせなかったが、一番可愛がってくれた人が隣にいてくれたのだから。今この時だろうと決心決意でのことだと思える。10年弱の時間はとても短く感じられる。最期の時間はやや苦しいものになってしまった。ああしなければという少しの後悔も無いわけでない。全てが思うように生きられるわけでない。ましてや話ができるわけでもないし。それでも十分な気持ちをもって触れ合ってきたつもりだから勘弁してくれやと、ひとりごちて穴を掘る。固まった体は持ち上げると想像以上に軽くて少し戸惑う。最期にご苦労様とすっきりした気持ちで背中をさする。伸びきった前脚をやや折り曲げて土を被せた。隣では遅咲きの山桜が風に吹かれて散っていた。