
松山選手は目を腫らし、涙を流していた。近時、松山選手の話題はよく耳にする。特にその美しいスイングについて。メジャーでの強さについて。全米プロ選手権。先週も61をマークし、優勝。メディアは優勝候補筆頭として報道していた。今週、松山選手ならメジャーに勝てるかもしれないと思ったが、結果はとてつもなく悔しいものであった。多くの人が感情を共にしたのではないだろうか。英語の苦手な松山選手であるが、ツアー内でも言葉の壁を越え、友情をはぐくんでいるようで、J・デイは松山選手の実直な態度に対して、「先週の優勝だけじゃなく、いつ勝っても、あいつは最後までドライビングレンジにいて、パットをして、何かを練習している。ただ勝つために、ここにいる誰よりも一生懸命だと思う。だから先週の優勝も驚かない。今週また勝ったとしてもね」と。また彼のメンタルに対しても、「精神的にも非常に強い。気持ちの上下がとにかく少ないように見える。僕はあれが“日本人のメンタリティ”だと思うんだ。彼らはいつも心が波立たない」と。皮肉にも今週松山選手が見せた涙はそれに反していたが。予選二日間共にラウンドしたE・エルスは極めて強いシンパシーを持っていて、ラウンド中絶えず語り掛け、勝つための協力を惜しまない姿を示していた。しかし、最終日のオーディエンスだけが、そうではなかった。松山選手はラウンド終了後、殊勝にもインタビューに答え、普段は口数少ないものの、実に強くて美して壊れやすい言葉を語っていた。「ここまで来た人はいっぱいいる。ここから勝てる人と、勝てない人の差が出てくると思うんで。勝てる人に、なりたいなと思います」。或いは、「このギリギリのところでやれるのは楽しいですし。そこで勝てればなおさら楽しいと思うんですけど、これを次に生かしていけるように、何をしたらいいのか(今は)分からないですけど、一生懸命、練習したいと思います」
それら芯のある言葉を耳にして、もう、堪らない気持ちに襲われている。