なながつのはじめ

なながつついたち。深緑の稲穂の海を風が走り抜ける。稲穂が少し裏返り白さを見せ、その先の稲穂へ、その先の稲穂へと、伝わって行く。風の姿形は見えなくとも、実体としての姿の一部が分かる。風は一団の塊ではなく、強弱の振度をもって流れて行く。波のよう。風はあっという間に川向かいの隣の庭先まで届く。全速力で競っても追いつけない速さだ。風を見て土曜日の朝が過ぎる。