
大学の四年間をそんなことをしたものだから、虫が腹の奥に居座っている。うごめいた虫はスカウトの虫であった。ボーイスカウトである。怖い先輩から「サイトに残すのは感謝と足跡だけである」と云われ、何度も何度もサイトの掃除をした。五分前行動を厳命され、遅れればペナルティーに見舞われる。食べ物を粗末にしてはならないとされ、食べ残すは厳禁で喰い地獄にのたうち回る。下準備と意思疎通は徹底され全てにおいて報告が義務化されていた。人間というものは不可思議でそういう厳しさには体がなじむが、気持ちが背くのである。不思議である。考える前に飛べがよいものを考えては反発し、考えてはチャンスを失う。まずはなれれば済む話である。バカさと単純さというのはアル程度の割合で必要不可欠である。さて、この最終日は、感謝と足跡のみ残して帰ろうと、せっせとサイト中を歩き掃除をしていた。感謝というのは言葉では簡単だが、本当の感謝を態度で表すのは難しい。しかしスカウトでは「来た時以上に綺麗にして帰る」というのが感謝の表現とされ、それはそれ以上の説明は不要とされた。掃き掃除をし、ゴミを拾って歩く。考えていたことは、この育成会は立派だったと、ゴミ一つ残さず帰っていったと、分かる人には伝わるだろうという思いと、新体制の育成会のキャンプが成功裏に終わって欲しいとの思いであった。しかし理想は常に裏切られる。ふとしたことで、そんな個人的な思いや行動は全て水泡に帰してしまった。実に残念であった。