
いろいろ聞いてくる5歳の長男のこと。夕方くらいから「おとうさん、ねぇ、『いのちとり』ってどういう意味?」と二、三回聞いてくる。たぶん、どっかで耳にした言葉なのだろう。「そうだな・・・うん、あやうく命をなくしそうになること、しにそうになること」って。辞書も自信もないものだから、頭にうかんだ言葉を繋いで説明した積もりになっていた。その答えを理解したのかしなかったのかはともかく、いや、そもそも、本当に聞きたいところはそうじゃぁなかったのかもしれない。9時になったのでそれでは寝ようと寝室に向かい部屋を暗くすると、今度は「ねぇ、おとうさん、しんだらどうなるの?」と暗闇のなかからぽつりと聞いてくる。「そうだな、お星様になるんじゃぁないかな」とまぁ、それなりの答えを答えると、すぐさま、向こうから、すすり泣く声が帰ってくる。泣いている。「お父さんはしんじゃうの?」・・・「いや、お父さんが死ぬわけないじゃぁないか」と答えたものの心では「人は皆死ぬ」と思う。「おとうさんは100歳こえると、しんじゃうの?」・・・「いや、おとうさんは100歳越えても死ぬわけもない!」と答えたものの心では「80歳くらいでしぬんじゃぁないかな」と思う。続けて「だって、お父さんは強いんだから」と答えたものの心では「ほんとは、よわっちいけどね」と思っている。生きるということは死ぬこと以上に怖いなと、ふと思ったりする。