
春の嵐は二月の週末毎にことごとく訪れる。この日の嵐は雨量のわりに風の強さは控えめであった。朝頃に十分であった日照も、昼事には雲に覆われて南からの風も吹き始める。夕方頃から雨量が増さり、徐々に強まり、22、23時頃2~300mを歩いてやってきたS君の衣服を濡らすには十分過ぎるほどであった。S君とはそういうタイプである。丁度その二時間ほど前、屋根に当たる雨音を聞きながらじっくりと沈むように眠りに着こうと暗闇の天井に目を向けている頃、電話の向こうからの誘いがあってと後輩の仏頂面が目に浮かび、意を翻して、誘いに乗ることにした。後輩とはそういうものである。外は雨。それでも土曜だからOK、いいやと、迎えの車に飛び乗り、店の席に着くと、写真の張り紙があって、頼もしくも余計なことを告知している。鴨川の代行の最終便は概ね2時でそれ以降は帰る足を失う。必然的に締めはそれに合わされ、それ以上は○○人間の領域に至る。この告知文はそのボーダーラインを越えよと囁いている。それならばとこの日はボーダーを超えることになった。