(続)傘は一つしかない

大雨。なんでも、12月の降雨量の記録を更新したという。ほどの大雨。朝、長女を学校に送る。送迎の車で桜坂下はごったがえするだろうからと早めに出るも、それでも混雑。仕方なくも混雑の中に車の鼻先を突っ込む。程なく隣の車から長女の同級生が降りてくる。この大雨に傘も持たずに!並んでいる車列を迂回するように同級生が坂を上り始めた時、長女は車から降りてゆき、同級生にひたひたと近寄り静かに傘を差し掛けた。雨は大きな音をたてて降り続ていた。なぜが私の耳には何も聞こえていなかった。聞こえるはずもない二人の会話が聞こえたような気がした。並んだ二人はゆっくりと坂を上っていった。雨は降っている。【傘は一つしかない。その傘を自分でつかうのか、差し掛けるのか、それは自分次第で、自分の心そのもので、社会のありようでもある。】長女は傘を差し掛けた。それはとてもほほえましい光景であった。