
山に入り、木を切る。大木とは云えないが中木である。人力なので、下から枝を払いながら、上に進む。胸の高さでも気が遠くなるくらい太いので高さを得て、幹が幾分細くなるまで枝を払い、ちょうどいいところで幹に刃を入れる。半分も切り進むとメリメリミシミシと張り裂ける音を発して崩れ落ちた。夏休みに手つかずであった庭の草を刈る。背の伸びた雑草は質量が大きい。集めてみると大きめの蟻塚のようでもあり、仮にアリクイであったなら、長くて細い舌を差し入れおおごっそうに嬉々とするかもしれないが、私は私なので、どうと云うことない。草は草である。仮に山羊か牛の類であったなら、短くて太い舌を草に絡ませておおごっそうに嬉々とするかもしれないが、私は私なので、雑草の山を眺めても、よだれを垂らすことはない。