花火と梶井基次郎

暗闇に散る線香花火。火花散らせてオレンジ色の光の線を描き、連続して生成と消滅を繰り返す。背景もなく只、光がチラチラとしているものだからまるで宇宙のようで、光の速さを超えて、時空をワープしてる気にならないでもない。例えばそれは、梶井基次郎が「蒼穹」という小説のような散文詩のような文章で、雲の明滅を眺め入っては奈落に落ちていくようだ。と語った体験と、似ているけどあれほど陰鬱ではない。この梶井基次郎。病で夭折している。稀代の妄想家だと私は勝手に思っている。有名な「檸檬」ではレモンを爆弾に見立ててみたり、「桜の樹の下には」死体が埋まっているなんて云ってみたり、先ほどの「蒼穹」では雲の中に虚無を見たりと、想像力がえげつない。だが、この人の文章力は心象と風景を重ね合わせた時に発揮される。単なる風景も絵画にすれば、写実、印象、象徴とか同じ風景とは思えないほどの違いがあろう。風景を文章にしても同じ。梶井は印象派だと勝手に思ってる。印象的に風景を文字化してゆく。繊細に自己中心的にw。それも含めて名人芸だと思うけど。