飛んでみたい

西の空高くに、半分空に溶け、半分残った月が昇っている。焼かれて残った遺骨みたい。そのすぐ脇に見える箇所を飛行機がNARITAに向け通り過ぎる。実際には比べられないほどの絶望的な距離が二者には横たっている。更にそのすぐ脇、ツバメが群れをなして円を描きながら舞い踊っている。分からない。目覚めたてのコウモリが飛び始めているのかもしれない。幾粒もの石を川に投げ、広がる波紋に夕陽を載せて、花火に見立てる。揺れながら広がる水花火。チャイルドシートに長男を乗せた自転車はどん坂の上。立ち漕ぎで勢いつけて、ノーブレーキで下る。目を見開き、口を開け、声を上げ、風。風。風。夜しか飛べないコウモリでも構わない。黒くて汚くて嫌われても構わない。飛んでみたい。ただ、飛んでみたい。