草むらに潜むもの

この日夕方に帰宅すると、庭の一角、幾週にも渡って放置され自由気ままな雑草の丈は1mにならんとする勢いである。そのよく繁茂した草むらの中に目を凝らすと何かいる。二匹いるようだ。身じろぎもせず、低く構えこちらを凝視している。じわりじわりと距離を縮めてくる。小さな声が風に乗って聞こえてくる。「しー!逃げちゃうから!」狩りは群れで行われ役割分担があるという。残念なことに、この群れは意思疎通が不十分なようだ。更に残念なことに、捕食者の体操服の白がまぶしいほどに、緑の草むらの中で目立っている。ここが鴨川でなくて、アフリカのセレンゲティー平原で、私がトムソンガゼルか何かであるならば、身を襲う一世一代の危機に身じろぎもする。だが、一寸の疑いの余地もなく、そんなことはない。と、その瞬間!一匹の雌が飛び出してきた。口を開け目を見開き、「ガォー!」と云っている。「ガォー!」と。云って、いた。‥‥‥‥もう一匹は飽きてしまったのか、後ろを向いているのだが‥‥。