灯油

すっかり忘れていたのだが、昨日の夜から"お父さんは灯油係ね。買って来てね"なんていよいよ本格的な寒さの到来を予感してか頼まれごとをされていたのだが、一日の仕事を終えて帰宅すると"あれっ灯油は?"。"忘れてたっ"ってその時云われて初めてそういえばと記憶の短い糸を24回ほど巻き直せば、そのシーンに思い当たるってもの。それくらいもう脳内では日々脳細胞の自滅行為が進んでいるのだろうか。否、仕事か。18時過ぎにそそくさとすまそうと思うのだが、いよいよ何かしようと常に狙っている鳶の長男に油揚げさらわれたように、"ぼくもいく!"ってやけに軽い灯油タンク2つと食っても食っても太らないやけに軽い長男を車に乗せ、ガソリンスタンドに向かう道はもう暗く、おまけに寒くてしやしや雨なんて降っている。冬の夜、雨降るガソリンスタンドなんて、孤独と絶望を売ってるような極地みたいな場所だ。遠くに微かに見えたガソリンスタンドに先客はなく、良い塩梅に早々に用事も済むかななんて思っていると向こうから後ろから前から急ににわかにわき出したように車が同じガソリンスタンドになだれ込んでくる。灯油タンクと降ろし、いやに化粧の大げさな店員にタンクを預け、車内でTVでも見て待つことにしてもチャンネル権は長男に有るものだから、おじゃる丸を見るでもなく見ている。先客の影響もなく早々と灯油が充填されたタンクを両手で車に乗せ、再び同じ道を辿って帰路につく。"来た道かえるはただの馬鹿"なんて気にしない。家に帰り、ファンヒーターに火がつき、ミッションが終わる。