ちょうどこの時期になると日没後に蛍が舞っている。水を張った田圃のそば、蛍は光の筋を残しながら舞っている。「大山千枚田」まで子供を連れて観察しにいった。蛍は光る。わずかな光で。そのわずかさが丁度いい。闇が深ければわすかな光で十分な生命を感じる。

思い出すのは宮本輝の「蛍川」。ラストシーンの壮大さには息を呑んだ。ブンガクってそういうもの。作者が描きたいワンシーンの為に数十ページから数百ページを費やす。ラストまでの長い文章はそのワンシーンの為だけのためにある、場合もある。生きることもそれに通じる。場合もある。でも定的な違いは生きることにはラストシーンがないことだろう。それが始まりに重なっているから。